荒木健太のヘビーノベル『十二月の雨』①

場末のスナック屋号は覚えてない。急に冷え込んだ頃で、表の植え込みにクリスマスの点滅する電灯をあしらってあった。確実に12月に入ってた。
ニータという若い外国人女性がほぼ毎日ホールのボックス席へと給事していた。ママの恩人カルロスの娘である。
またママとカルロスとの間にできたまだ幼いエリもたまにカウンターの椅子に座り、床に届かぬ脚を振りながら塗り絵に興じ、私も一緒になってクレヨンを持ち、その手をそのままグラスに持ち替えるから、飲み終えると「教会の窓みたいー」とクレヨンだらけのグラスを、大きくクリスタルのビー玉があればそれくらいとても綺麗な目が輝いてエリはよく言ったものだった。
まさか私がカルロスを危めてしまうことになろうとは。
ぼおんぼおおんと人形時計が午前零時を刻んだ。
ニッカが笑う。ダブルだ。ドイツの白黒猫マッシュポテトサラダにポッキーの針山。いかんいかん。
カルロスの実家は床屋を営んでおり、8才の時いつもの放課後でのサッカーを近所の広場で興じてると、母親の弟シオンが「カルロスー!!」と大声で走り寄り両肩を掴んで「兄さっパパが殺された!」(つづく)